三年生の子守唄
僕達だってやる時はやるよ?
「三年生の子守唄」
「はぁ…とりあえず役割分担しない?」
僕達は今忍術学園近隣の村に来ている。
先日、孫兵が毒虫を逃がしちゃって村人全体に迷惑かけてしまったので、償いとして僕らは村の子供達のお守りをすることになった。
とりあえずこれ以上騒動を起こさないようにと、左門と三之助に長い綱を付け杭で止めておいた…なんか犬みたいだ
「とりあえず赤ん坊とそこで走り回っているガキ共は一緒に遊べないから、別れるしかないなぁ…おい数馬!お前赤ん坊やってくれ!」
「作兵衛…なんで僕?」
「保健委員だから」
「…保健委員がなんでも出来れば苦労はしないよ」
なんだかんだ言いながらも数馬は赤ん坊の所に行った…素直じゃないんだからなぁ
「藤内!お前も頼むな!」
「うん、了解したよ!」
役割分担は、赤ん坊組が数馬と僕、子供組は左門と三之助と孫兵、総本部は作兵衛…まぁ監視係って事かな
僕らが任された赤ん坊は少なく、一人で二人の赤ん坊の相手をすれば大丈夫そうだ
僕はおんぶ紐を使って一人を背中にしょい、もう一人を優しく抱き上げた
背中にいる子は大人しいけど、腕の中にいる子は母親を求め早々にぐずり始めた
「よーしよし…大丈夫、寂しくないよ?」
体を揺すってやれば少しは泣きが治まるが、この子は気難しい子のようだ
数馬はどうしているかと見渡すと、木陰にゴザをひいて赤ん坊と一緒に横になってる
あ、あれいいなぁ!僕は赤ん坊をあやしながら数馬に近づいた
「いーいかい君達?君達は死ぬために生まれてきたんだよ」
「数馬…それってあやしてるの?」
「あ!藤内…その子ぐずってるね」
僕の質問を無視して数馬は、ぐずる赤ん坊を覗き込む
「藤内…笑ってあげて?」
「……え?」
「赤ん坊って自分じゃ何も出来ないだろ?だから自分を愛して、優しく世話してくれそうな人しかなつかないんだ…だから笑いかけて安心させてあげて!」
「そ、そうか…」
出来る限りの力で笑顔を作ってみる…顔ひきつってないかな?
すると赤ん坊はやっと笑顔を見せてくれた
「やったよ数馬!」
「良かったね藤内!」
◆
「……作兵衛すまなかったな」
「あ?なにがだよ」
俺は今ガキに振り回されながらも孫兵の言葉に耳を傾ける
「私の責任なのに…巻き込んでしまった」
「いやぁお前だけのせいじゃねぇよ!…こっちだってお前に色々世話になってるからなぁ」
そう言いながらガキ共と遊ぶ左門と三之助を見た。
あれは遊んでやってるんじゃなくて、完全に一緒になって遊んでやがる…怪我させなきゃいいが
「俺も二匹厄介なのを脱走させるからな!」
ニカッと笑ってみせるとやっと孫兵は安心したような顔をする
「お前達は…いつも文句を言わないから、安心するが苦しいよ」
「…意味わかんねぇ!安心するなら苦しくねぇだろ…俺といてお前苦しいのか?」
「い、いやそういうわけでは」
「なら苦しくないんだろ!…そういうことにしておけ、な?」
「…そうだな、苦しくないな」
孫兵の気持ちも分からなくはないが…そんな事一瞬でも思う時間があるなら、皆で笑っててぇな!俺は…
「作兵衛!孫兵!鬼ごっこするから早くこーい!」
「…お前ら綱付けてるから逃げられねぇじゃん」
「完全に忘れてるねあの二人…ふふ、可笑しいな」
「ああ!可笑しいな!」
よし!鬼ごっこ開始してからその事実を教えてやるか
◆
「はい、お疲れ様」
夕方になって僕らの子守りは終わった。
左門と三之助と作兵衛は泥だらけだし、数馬は上着を赤ん坊に汚され寒そうだ。
「はぁ…なんかちょっと楽しかったかも」
「…俺達忍者にならなければ、ああやって毎日のんびり畑仕事とかして暮らしてたのかなぁ」
「僕は畑仕事より商いをしたいなぁ」
「数馬は商売うまそうだもんね」
「…ぼったくられそうだ」
僕らは忍者にならなかったらどんな仕事をしたいか話しながら
忍者になるために学園に戻った
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