ぬめりけ
誰でもいいから助けて!









数馬が不運そのものだとしたら、僕は巻き込まれ型不運だと思う。

いつものように忍たまの友を持って、静かに勉強出来るところを探していた。自室は数馬がいるし、喜八郎の部屋では集中出来ないだろう。かといって作法委員会の部屋にしても数々のカラクリが仕掛けられているため、勉強には不向きだ。


(やっぱり用具の倉庫が一番なんだろうなぁ。)

以前、午後から突然のテストをすると言われて一度だけ倉庫で勉強しようとした事だある。しかしその時は一年は組の山村喜三太に邪魔をされて勉強どころか酷い目にあった。

(今日は平気だろうか?)


静かに扉を開けると、誰もいないしんと静まり返った倉庫が僕を歓迎していた。
よし、これなら大丈夫だろう。安心して中に入ると。


「はにゃ〜浦風藤内先輩だぁ!」

後ろから喜三太に声をかけられた。これはもう何か運命だと言われているような感覚に頭が可笑しくなりそうだ。


「やぁ喜三太…用具委員の仕事かな?」

僕の顔が若干ひきつっているのがわかる。

「はい。用具の点検にきましたぁ。先輩はまたお勉強ですかぁ?」

「そ、そうなんだ!でも邪魔になるから失礼するよ!」

「いえいえ!すぐ終わるので大丈夫ですよぉ。」

そうニコニコ言われると断りづらい。仕方なく僕は用具倉庫に入っていった。



しばらくは喜三太がカタカタと用具点検する以外物音もなく、平和だった。

(なんだ…僕が警戒しすぎてただけか。)

物音が止むと、点検を終えたのか喜三太が僕に近づいてきた。

「はにゃ〜先輩よく勉強なんて出来ますね。」

「まぁ…嫌いじゃないし。喜三太だって好きなことは何だってするだろ?」

「はい!僕なめくじさん大好きなんでいつも一緒にいます!」

そう言うと喜三太はなめ壺からおもむろに、なめくじを出してきた。

「ひぃ!」

いやいや落ち着け。ただのなめくじじゃないか!毒蛇のジュンコだって慣れたんだ!僕は大丈夫なはずだ…それに喜三太が一番好きなものなんだから否定的な態度を示すのは良くないだろう。

「こ、こんにちは?」

僕は精一杯頑張ってなめくじさん達に挨拶をした。するとおよそなめくじとは思えない機敏な動きをし始めた。それが無数にいるのだから気味が悪い。

「あ!なめさん達先輩の事大好きみたいでスキンシップしたいって!」

「はぁ?!スキンシップって―」

言うやいなや無数のなめくじが僕に襲い掛かってきた。

「あぁ…ちょっやめ!」

ぬるぬるして気持ち悪い!おまけに容赦なく僕の身体を舐めまわるように駆け抜けていく感覚が僕を襲う。もう僕の目には涙が滲んでいた。

「あっ…はぁ、っ!き、喜三太ぁ!早く取って!お願いぃ!」

「はぁい!」


喜三太が僕に手をかけたその時倉庫の扉が勢いよく開いた。涙でぐちゃぐちゃになっていたのと、逆光のせいで誰が来てくれたのか分からない。でも誰でもいいから早く助けて。

「…藤内?」

あ、喜八郎だ。声に反応して顔を上げると確かに喜八郎がいた。
いたのはいいが、喜八郎は怖い顔をしてその場で動かなくなっている。


僕が何したっていうんだ。


※おまけ(綾部視点)


せっかく天気が良いから塹壕でも掘ろうと思っていたのに、肝心の道具が使いすぎで壊れてしまった。
今から町に出て買ってきてもいいけど、今日は用具倉庫から借りて明日町に出ることにした。
(藤内も連れていけばデートになるし。)

そんな訳で用具倉庫まで来てみると何やら物音がする。

『あ…いゃ!』


盛んだねぇ、こんな真っ昼間から。なら今は入れないか。
くるりと回れ右をした私だったが、変に胸騒ぎがする。
あれ?…この声あの子に似てるけど、いやまさか。
一気に頭が真っ白になって勢いよく扉を蹴り開いた。

やっぱり私の愛しい藤内だった。ただ私が思い描いた状況とは全く違う。
藤内の隣には一年がいて、藤内の身体にへばりついているなめくじを取っている。

「…藤内?」

私の声に反応してあの子がゆっくりと顔を上げた。
その顔は涙に濡れ、なめくじが通った跡なのだろう顔が所々滑りで光っている。実に私をぼんやり見上げる顔はイヤらしかった。

助ける為に入ったのにも関わらず、私は動けずにいる。私だって男だ。好きな子のイヤらしい姿を見たら反応しちゃうよ。

とりあえずどうしたらいいかな藤内?

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リゼ