いや男だから(綾浦+仙)
「…くッ…ゲホゲホ」

「藤内!大丈夫か?!」

委員会途中に気分が優れないと部屋を出た後輩を心配して来てみれば…茂みに身を隠し吐いてしまっていた

「た、たちばな先輩」

「…吐き残しはないか?」

中途半端に戻してしまっては辛いだろうから背中をさすり、促してやるとちょっとだけ吐き出した…ここまで具合悪いのなら休めばいいものを

「大丈夫か?」

「……は、はい」

大丈夫だと言っても顔色は優れない、このままでは倒れてしまうな

私は藤内を抱き上げ医務室に向かう
いつもなら驚き暴れるのだが、今はその元気すら無いようだ

「いつから具合が悪いんだ?」

「…昨日からです。胸がムカムカして、食べたらすぐ吐いちゃって…あと少し熱っぽいかも…」


この症状…もしかして


「藤内!さぞや辛かっただろうッ!」

「……………はぁ」


医務室に行くと丁度伊作が当番だったようで、ぐったりした藤内を見て直ぐに布団等を用意してくれた

「うん…とりあえず浦風君をここに寝かせて…」

「伊作…私は出掛けてくる」

「はぁ別に構わないけど…」

私は確信した、今私が持っている総ての力を使い

「犯人をしばきに行ってくる」

「………は?!」

私は藤内を残し医務室を出た…待っていろ藤内


お前を孕ませた犯人

綾部喜八郎をしばく!



「綾部喜八郎!どこに行きやがった!!」

委員会だというのに、藤内が呼びに行かなければ奴は絶対に来ない…どこにいるんだ!!

とりあえず学園全体を焼き払っても見つけ出さなければ!!…あ、あいつは確か

「五年の竹谷!!」

「ふぁい!!」

体が変にびくびくしているが…知ったこっちゃない

「綾部を見なかったか?!」

「あ…綾部は見てません!」

「使えないなこの蛆虫!!」

「聞いておいてその扱いですか?!」

喚いている蛆虫を無視してまた綾部を探しに行く

中庭まで来ると紫色の忍び装束が見えた…あいつか?!

「綾部喜八郎!!」

「ヒィ…いえ私は田村です!」

「チッ紛らわしい事するな!このサラスト圏外!」

「…ッそれは言わないで下さい!!」


中庭を走り去り、裏庭まで来たが…誰もいない


「まったくどいつもこいつも使えない奴等バッカリだ!!」

「そうですねぇ…」

「そうだろう!…って、お前は!」

下から賛同する声がすると思ったら足元に落とし穴があった…って

「喜八郎!今まで何してたんだ!」

「…蛸壺を」

何でも無いことのように私が探していた喜八郎が穴から顔を出す

…こいつが、藤内をッ

私は無理矢理穴から引きずり出し胸ぐらを掴む

「………ッ先輩?」

「お前って奴は…何て事をしてくれたんだ!藤内を妊娠させやがって!!」

「……は?…妊娠?」

「そうだ!先程から悪阻が来ていて…って喜八郎どこに行く?!」

【妊娠】という言葉に目の色を変えた喜八郎は、直ぐ様走り出す…私が追い付くのがやっとの速さだと?!目指すは藤内のいる医務室へ!!



◆◇◆


「はい…浦風君、風邪薬飲める?」

「あ、ありがとうございます」

「胃に来る風邪だったみたいだね…今日はしっかり休養してね」

「…はい」

仙蔵が連れてきた時は本当に顔色悪かったけど、少し落ち着いたみたいだ
あとはゆっくり寝れば治るだろう

さて夜飲む薬を、と思ったらものすごい音を発して医務室の戸が開いた

「ッ藤内!」

現れたのは綾部君で、その後に仙蔵が続いて入ってきた…嫌な予感

「………綾部先輩?」

「藤内…子供のためにも今すぐ結婚しよう」

「喜八郎!まずは自分の子を宿してくれてありがとうと言わなければいけないだろう!」

浦風君の手を取り、いつになく真剣な顔付きをしている綾部君と仙蔵を交互に見て浦風君は私に助けを求める…えっとまず何から説明すればいいんだ?

「…に、妊娠はしてないよ?」


男だから




あぁ新野先生…保健の授業しっかりやらないと駄目ですね

私は固まった二人の馬鹿を見てそう思った

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リゼ