誓い、再び(綾浦)
※誓いの続きにて注意





ど、どうすればいいんだろう…





夜中僕は手裏剣の自主練習で汗をかいてしまったので、風呂場に来た

もう夜も遅いから誰も居ないだろうと思っていたのだが、脱衣室に紫色の忍び装束が無造作に置かれていた…四年生が今入ってるのか、嫌だなぁ三年生は入ってくるなとか理不尽な事言われたらどうしよう

恐る恐る風呂場の戸を開けてみると

「…あれ、藤内だ」

「あ、綾部先輩?!」

同じ作法委員会の先輩である綾部先輩が湯船に浸かっていた…良かった、知らない先輩じゃなくて

「藤内、風邪ひくから早く入りな」

「あ、はいすみません…失礼します」

と、とりあえず身体を洗わなければ!僕は綾部先輩に背を向けて、身体と髪に付いた汚れを落とす…そういえば、綾部先輩に会うのは久しぶりかも

最後に会ったのは確か、用具倉庫で一夜を過ごした時かな…あれから作法委員会は活動延期が度々続いて結局会えずじまいになってしまったのだ

あの時、綾部先輩と二人きりだったんだよな

急にいろいろと思い出してしまって恥ずかしくなってきた…そ、そういえば今も二人きりか!…ッ駄目だ意識してしまう

荒々しく身体と髪を洗い気を紛らわしてみるがあまり効果はなかった…どうしよう

「もう終わったの?」

「は、はい!」

「なら湯船に入りな…暖まるよ」

「えっ…あ、あの」

「………早く」

「し、失礼します!」



チャポン…



入ったはいいが…どうしよう、何か面白い話とかした方がいいのかな

綾部先輩の様子が気になってチラリと盗み見た

普段あれだけ蛸壺を掘って陽を浴びているにも関わらず、美しく白い肌をしている
そして土を掘り起こすのは見た目よりかなりの重労働であるから、それを毎日行っている先輩の身体はしまっていて程よい筋肉がある…僕と1つしか違わないだなんて

「藤内…私の身体に何か付いてる?」

「へ?!…いや違います!」

どうしよう…いくら同じ男でも、裸を凝視されたらびっくりするよな

「私の身体…気になったの?」

「いや…あのッ」

「どうなの?」

「………はい」

もうここは白状するしかない

急に、沈黙が僕を襲う。綾部先輩は何かを考えるかのように水面を見て黙ってしまった。
多分この沈黙はほんの少しの間だったのだろうけど、僕にはとても長く感じた



「触ってみる?」

沈黙を破ったのは綾部先輩だった。しかしその言葉の意味が僕にはすぐ理解できなかった…さ、触るって

「私の身体…触りたくない?」

「えぇ?!」

実は用具倉庫に閉じ込められた時に、寝ている綾部先輩の肩に触れたことはあったが…今はお互い裸で、直に肌に触れてしまう

触れてみたい…けど、恥ずかしいしやっぱり怖い…なんだか後戻り出来なくなるような、そんな気がする

「…もし、自分だけ触るのが嫌なら、触り合いっこしようよ…そしたら恥ずかしくないでしょ?」

「お互いに…ですか?」

「そう」

それなら、いいかもしれない

「…じゃあ、触り合いっこで…」

「藤内に触っていい?許可してくれる?」

「は、はい!大丈夫です!」

僕の言葉を確認すると、綾部先輩はゆっくりとこちらに近づいてくる

先輩が動く振動が波として伝わってくる…あ、なんかクラクラしてきた…逆上せたのかな?

ぼんやりしているとすぐ近くに綾部先輩の顔があった

「綾部先輩?!」

綾部先輩は僕を包み込むように抱き締め、背中をさすってくる

「…ッ…ん…」

くすぐったい筈なのに、何故か腰がゾクゾクしてきた

「藤内…私にも触って?」

「…ッあ、はい…」

恐る恐る手を伸ばすが…駄目、もう

「…藤内?」

身体を綾部先輩に全て預け




ガタンッ!





「お風呂いけいけどんどん!」

「今日もギンギンに汗かい…ってお前ら何してるんだ?!」


どこかで聞いたことのあるような声が響いた後


僕は意識を手放した










「…ん、朝?」

「お、起きたか…身体は辛くないか?」

「し、潮江先輩?!」

なぜ、僕が潮江先輩と立花先輩の部屋で寝ているのか問うと、どうやら僕はお風呂で逆上せてしまってそれを発見した潮江先輩がこちらに連れてきてくれたようだ…でも、あれ綾部先輩はどうしたのだろうか…立花先輩もいない

「潮江先輩…あや」

「綾部と仙は今裏山にいる…それ以上は何も聞くな」

「……はぁ」

僕より長くお風呂入ってた綾部先輩は大丈夫だったのだろうか


僕が暢気に自室に戻り数馬と朝食を食べている時に、綾部先輩が『浦風藤内が性について理解が出来るまで指一本も触れません』と立花先輩に誓いをたてさせられていたというのは…また別の話
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リゼ