2話
「ヒーコ?」
「もう!その呼び方やめろって言ってるだろ!」」
英彦は立ち上がって男性に近づくと、パンと男性の胸を叩いた。
「あ…」
薫は慌てたが、男性は怒らず笑って英彦をつついている。
「………」
どちらかといえば男らしい英彦が、まるで親戚の叔父さんに甘えている甥っ子のようで、薫は幼なじみの意外な一面を見る思いだった。
「ハア、ハア…あっついのにもう!」
「ヒーコ。友達、呆れた顔してるぞ?。」
「あ…」
英彦は、赤い顔のまま薫に近づいた。
「わりい。久しぶりに会ったもんだから。」
「いいよ…ボク、帰った方がいい?」
薫は苦笑いしながら、立ち上がった。
「ちょっ、ちょっと待って。頼んでみるからさ。」
英彦が男性と話をする間、薫は聞いちゃいけない気がして二人に背中を向けてボ〜ッと景色を眺めた。
「………」
「薫君ていうんだ?」
男性に声をかけられて、ビクッと振り返る。
「う、うん…」
「初めてなんだ…大丈夫?」
「え?…う、うん。」
「ホントに?。かなりショッキングなもの見ちゃうかもよ?」
「………」
「ヒーコは大丈夫だって言ってるけど」
「ちょっとー。脅かしてどうすんのー。ショッキングなもの、見せなきゃいいだろ〜。」
英彦は、ムッとした。
「じゃあ、食事だけとか?」
「え?…うん。」
「久しぶりにヒーコに会えたし、薫君も可愛いからな〜。俺、我慢出来る自信ないな〜。」
「なっ…」
英彦はポカンと口を開けて驚いた。
「仕方ないか。じゃあ、また今度ってことで。」
男性が、あっさりと去りかける。
「あ…」
「ちょっと待って下さい!」
薫の精一杯の大声に、男性と英彦が振り向く。
「びっくりした〜。」
「す、すいません。ボク、大丈夫ですから。そ、その…一緒に連れてって下さい。お願いします…」
最後の方は真っ赤な顔で俯いた薫に、男性はニヤリとした。
「了解。カラオケボックスでいいかな?」
英彦の肩を叩く。
「う、うん…」
英彦も、何故か赤い顔で俯いた。
「薫君もいい?」
「カラオケボックスって…歌、歌うんですか?」
「うん。最初はマイク持って、後は違うマイク握ってイテテテッ!」
英彦が男性の腕をつねっていた。
「調子に乗んな。薫が違うマイクなんか握れるわけねえだろ。」
「あは、あはは…」
苦笑いする男性と、男性を睨む英彦を、薫はキョトンとした顔で見つめた。
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