1話 2013.10.05UP
ヒデヒコの横で、カオルはソワソワと落ち着きがない。
「薫〜、緊張すんなって。」
「だ、だってさ〜。」
薫は不安そうな表情で英彦を見上げた。
「腕、握んじゃねえの。仲のいい兄弟か恋人同士に見られっぞ?」
「あ…」
赤くなりながら腕を離す薫の頭を、英彦は微笑みながら撫でた。
「とても同級生には見えないよな〜。」
「ふん…どうせ、チビですよ〜だ。」
プイッとそっぽを向いた薫は、英彦より頭一つ分程小さいが、本人が気にする程小さくはない。むしろ英彦の方が、普通より大きいのだ。何でも。
「今日はムチャクチャ暑いから、あんまり人いないな。」
「え?…こんなにいっぱいいるのに?」
「ああ。」
目の前を行き交う人達を眺めていると、薫はまた英彦の腕を掴みそうになった。
「ちょっと休もうぜ?」
「え?…うん。」
英彦の後についていき、噴水の脇にあるベンチに腰かける。
「ふ〜。」
「英、何回目?」
「何が?」
「その…このアルバイト…」
「う〜ん…何回目って言われてもな〜。」
「………」
「わざわざ往復のバス代出して来てもさ、何もないまま帰ることだってあるんだぜ?」
「嘘?」
「ホント。そんなに甘くないって。」
英彦が噴水を眺めたので、薫も眺めた。
「………」
「オレみたいに『金くれるなら、何でも。』って奴より、薫みたいな『ボク、なんにも知りませ〜ん。』って顔の、田舎者丸出しの奴の方が人気あるかもな。」
ムッと睨まれて、英彦は舌を出した。
「ホントに田舎者だし、なんにも知らないんだから仕方ないじゃん。」
「わかったわかった。だから、こうして一緒に」
英彦が話すのをやめ、薫の後ろに視線を移したので、薫は振り返った。
「こんにちは。」
英彦は、とてもそんなふうな人とは思えない、爽やかな雰囲気の若い男性に挨拶した。
「やあ。今日は友達と一緒なんだね。」
二人の間に挟まれる格好になった薫は、ポカンと口を開けたまま、英彦と男性を交互に見る。
「うん。同級生。」
「へえ〜。」
男性に見つめられて、薫はヒクッと固まった。
「あはは。可愛いね、この子。」
「でしょう?。まだチンポの皮も」
「わ、わっ、そんなこと言うなバカッ!」
必死に英彦の口を塞いで、真っ赤になる。
「気にしなくていいよ。ヒーコだって、つい最近だもんな、剥けたの。」
英彦のことをヒーコと呼び、ニヤリと笑う男性に、英彦も赤くなった。
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