6話 2015.06.08更新
「ここ…薬、屋…さん?」

少年は体を起こして、周りを見回しました。確かに、薬屋の中にある、見覚えのある長いすに横になっていました。

「やあ、気がついたみたいだね。」

カウンターの奥から、薬屋のお兄さんが顔を出します。少年は長いすから降りて立ち上がると、眼鏡を掛けたお兄さんにペコリと頭を下げました。

「すいません、ボク…」
「謝らなくていいよ。オレも、いい思いしたんだから。」
「…え?」

少年は、顔を上げて薬屋のお兄さんを見つめました。お兄さんが、微笑みながら眼鏡を外します。

「あ…ああーっ!」

少年は、薬屋のお兄さんを指差しました。

「さっきのお兄さん!」
「やっぱり気づいてなかったか。」

薬屋のお兄さんは、顔を赤らめながら、少年に近づきます。

「マルクが、あんなにエッチな子だったなんて、知らなかったよ。」
「ち…違うよ〜、あれは、成り行きで」
「オレは二回、マルクは三回以上出したのにか?」
「う…」

少年は、真っ赤になって俯きました。

「騙すつもりはなかったんだ。オレ、仕事以外じゃ、眼鏡掛けてないんだよ。」
「そ、そうなんだ…」
「ああ。マルクの様子が普通じゃなかったから、つい言いそびれてしまったけどな。」
「………」

薬屋のお兄さんは、微笑みながら、黙ってしまった少年の前にしゃがみます。

「ま、結果オーライだけどな。前から、マルクのこと気になってたし。」

少年は、ビクッとお兄さんと目を合わせました。

「それって…」
「はい、コレ。」
「な、何?」

お兄さんは、小さな袋を少年に差し出します。

「お爺ちゃんの薬。」
「え?」
「マルクの牛乳、あの後、おれ喉渇いちゃって飲んじゃったんだ。」
「え?…ええー?」
「だから、そのお代と、気持ち良かったお礼を合わせて…コレで許して欲しいんだ。」
「お兄さん…」
「一緒に、お尻の穴に塗る軟膏も入れておいたから。かなり、無理しちゃったからな。」

薬屋のお兄さんは、立ち上がって眼鏡を掛けると、微笑みながら少年の頭を撫でました。少年は、嬉しくなって泣きそうなります。

「うぐ…」
「家まで送って行くから、もうちょっと待っててな。」
「ひっぐ…うん…」

少年は、小さく頷いて涙を拭きました。
 
 
 
 
少年は、馬車の手綱を引く、薬屋のお兄さんの逞しい腕を抱きます。

「マルク…そんなにくっついたら、緊張しちまうよ。」
「えへへ。」
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