寒い時の一番です。
 2019.10.17 Thu

寒い時は、コレが、一番……!


「……え?」
「……は?」

なんて、白いソレを見て、ハッと思い付いて、すぐに用意して、ちょっと期待して、そうして此処に持ってきた訳なのだが。

「……ソレって……」
「……まさか……」

まさかのまさか。いや、だって、この展開は、流石に予想していなかったものだから。

「……アン、マン?」

見事に重なったのは言葉だけではなく、驚愕一色の表情に、片手には紙に包まれたコレを一つ持ち、もう片手は中途半端に上げて固まっているという体勢も。

「………」
「………」

……どうしよう、と思いつつ、まぁ自分一人で食べれば良いかと考え直して笑う。

「……寒い日は、コレを無性に食べたくなるよね」
「……そうだのう、食べたくなるのう」

そんな普通の会話をしてから、手に持つコレにかぶり付く――…筈だったのだが、口は手元の白から遠ざかり、目は隣の白に向かって。

「……丼村屋の?」
「む?」
「……ソレ」
「あ、おお、そうだが……で、おぬしのは、何処のだ?」
「……作った」
「む、おぬしが?」
「蝉玉が食べているのを見たら、食べたくなっちゃって」
「ほーぉ……で、コレを半分渡したら、ソレを半分貰えるのかのう?」
「等価交換にならないよ。お店の物と、素人の手作りじゃ……」
「良いから良いから。ほれ」
「……ん、じゃあ、はい」
「……うむ、かたじけない」

そうして、半分のコレを渡し、代わりに半分のソレを貰う。そのまま頬張れば、温かくて、ふわふわで、甘くて、しっとりしていて。少し舌先がヒリヒリしているが、まぁいっか。
本当は、もう一つ用意すれば良かったのだけれど。そうしないと、本来は半分しか食べられなかったのだけれど。

「………」
「………」

そうしなかったのは、コレを半分こにしたかったから、なんて口を滑らせないように、貰ったアンマンで蓋をした。また軽く火傷をした気がするけれど、それでこの関係が壊れないのならば、火傷の一つ、何の苦にもならないから。

「………」
「………」


……大切な人と一緒にいる、今この時が、一番。




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