呟き小話です。
 2018.05.12 Sat

「……モフモフで可愛い」

とろんとした目と、ぽつりと零れた呟き。その顔は、遠くの白い宝貝と、その隣の青い髪の道士に向けられ。
対して彼女のすぐ隣にいる青い目の道士が隣の白い霊獣に向けたのは、キッとした目とグッと突き出た唇。

「……もっとモフモフせい」

……新年早々無茶っスよ、御主人。

1:戌年



「……そろそろ帰るかのう」

そんな一言と共に、当たり前のように差し出された橙色の手袋。目を見開けば、刹那的に浮かんだ羞恥を見透かさんばかりに細まった青色の横目。

「……別に、誰も見ておらぬであろうが」

尖った口で呟き、ぷいっと背けられた白色の帽子。二人の顔のような、綺麗な赤色の空。


2:色溢れる日々



「今日は『みどりの日』らしいぞ」
「そうみたいだね」
「という訳で、桃園へ行こう」
「絶対に『みどりの日』は関係無いよね?桃が食べたいだけだよね?」
「失敬な。わしを誰だと思っておる!」
「太公望だから、そう思うんだけど」
「むぅ……」
「……ま、でも良い天気だし、行こうか」
「うむ!」

そうして、緑一杯の場所を目指す。

「しかし風が強いのう」

彼のお目当ては、分かり切っている。けれど、私はそれでも良いのだから。

「でも、雲が早く流れて面白いね!」

彼女のご指摘通り、緑の葉に思い入れは無い。それどころか、実すら無くても良いのだから。

今日という日に、一緒にいられれば。

4:みどりの日



何て機能的な服なんだろう、と今更ながら感動した。
厚手の手袋は此方の背の強張りが感知されるのを防ぎ、胸元の金属板は大音量の鼓動を遮断し、火照り切ったこの身を少しばかり冷やしてくれる。

……まぁ、青い瞳に覗き込まれ微笑まれては、この赤い顔も、それ以上の事も、きっと筒抜けだろうけれど。

5:此方を抱き締める服



たとえ、どれだけ強くても。たとえ、自分の方が弱くても。
たとえ、どれだけ遠い存在であっても。たとえ、自分には決して近付けない存在であっても。

「……わしは、おぬしを、守りたい」

心に秘めてきた言葉は、傷一つ無い彼女を前に、自然と零れ出た。傷付いた心を見せず一人微笑む彼女を、絶対に。

6:守りたい



「やっぱり優先させるかな……」
「急がなくても良いではないか?」
「!太公望」
「まだ大丈夫そうではあるし、おぬしも他の事で忙しいのだし……それに、他の手段もあるであろう」
「んー……そうだね、武吉君に頼もうかな」
「……二人とも、桃を食べながら何の話っスか?」
「「書庫の棚の修復」」

7:長年の仲ですから



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