約束のエルサレム
大勢で囲む如月寮の食事は騒がしい。
あるときはおかずを奪い合い、あるときは肘打ちで防いだりと、まるでアルコールが入っているのではと疑うような喧噪だ。


「でね?やませってばティッシュケースの中に卵隠してたの!」


まじうける!と咲はけらけらと笑った。エッグハント不参加だった鈴乃と愛一郎も、続いてにやりと笑う。


「咲こそ、馬鹿丸出しな隠し場所だったじゃないか、…まあ、」


そこまで言ったヴェロニカは、斜め向かいに座っているレグルスにちらりと目をやり、意地悪く口元を歪めた。


「咲以外にも、お馬鹿さんはいたみたいだけどぉ?」

「う、うるっせー!!」


叫び、がたりとレグルスは立ち上がった。レグルスの隣に座っていたやませが冷めた目を向け、「行儀悪い。」と肘鉄を撃ち込む。やませの肘が脇腹にクリーンヒットしたレグルスは、「うっ」と呻いたかと思うと崩れ落ちた。


「馬鹿二人なんかより、僕は自分の妹の将来が心配だよ、全く。」

「…何故です。」


じろりと、やませが十花を恨めしげに睨んだ。


「あんな捻くれた場所に隠すような妹に育てた覚えはないよ、僕は。」

「やませに育てられた覚えだってありません。」


十花がつんとそっぽを向く。その十花の頬を、やませは腹立たしげにフォークの柄でぐりぐりと突いた。
やませも人のことなど言えず行儀が悪い。


「…でも、」


ぽつりと、寿歌が呟いた。


「楽しかったよね、エッグハント。」


周囲を見回し、寿歌は微笑んだ。そっぽを向く者、眉間に皺を寄せる者などもいたが、ここにいる全員が自分と同じ気持ちであることを、寿歌は分かっていた。


「また来年もやろうね、エッグハント。」



- 8 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ